<税務署が謝罪しました>
ある土曜日、一本の電話がありました。地方都市で歯科医をしている方からでした。
内容は、税務調査にあっているが、3人の調査官の態度が大変威圧的で恐怖を感じているというものでした。ホームページを見て電話をかけてきたものでした。
最初話を聞いたときは、突然3人の調査官がやってきて、有無をいわさずに診療室に入り、患者の資料を見せろと言い、2階の寝室まで入ってパソコンを見て大きな声で問題点を指摘するなどされたのだが、このやり方に問題はないかというものでした。
私は、問題はあるが、私が行くには片道3時間ぐらいかかるし、地元の税理士や民主商工会で対応してもらうのがいいのでは、とやんわりとお断りしました。次に税務署員がやってくるのは、翌週の火曜日だということで、日程も差し迫っていました。
翌日の日曜日に再度、この方から電話がきました。姉さんや友人に相談したら、「長いものには巻かれろ」「税務署に盾突くともっとひどい目にあわされるぞ」と言われたといいつつも、どうしても腹が立ってしょうがないというのです。一方で恐怖心もあると。
そしてこの方は私に言いました。税務署員の一人が簡単に知りえないことで、自身にとって差別ともとれる発言をしたというのです。市役所で調べれば分かるのですが、税務署が税務調査で納税者本人に話を聞く前に調べてきたと考えられます。これには二重に問題があります。
①差別的発言をして納税者を威圧し、恐怖感を与え、税務調査を強迫的に税務署に有利にしようというもの
②税務署員が持つ質問検査権は必要がある場合に第三者である例えば市役所を質問して検査することができると規定されており、納税者に接する前に調べることは、いつの時点で必要になったのか、という問題があるのです。これも違法です。
このまま放っておいては、この方の人権が踏みにじられ、心に傷が一生残ってしまいます。私は行くことに決めました。月曜日に5時起きをして新幹線に乗って、午前8時過ぎに地方都市の駅に着きました。納税者にはあらかじめ今回の税務調査の問題点を文書にまとめてもらっておきました。駅の近くの喫茶店で挨拶し、簡単に打ち合せをし、「税務代理権限証書」を頂きました。
さあ、税務署へ電話です。担当の総括官に趣旨を話し、今から打ち合せに行くと伝えました。幸い、税務署は駅に近くて徒歩でも行けるようなところにありました。税務署では、担当の総括官と3人の担当者のうち1人が対応しました。納税者が声を震わせて文書にまとめた話をしました。文書の最後には、対応によっては憲法16条に基づく「請願書」も検討すると付け加えておきました。
税務署の対応は、まず総括官は謝ってくれました。不快な思いをさせたことに対してです。しかし、担当の2人が不在の為、真相がつかめないことを理由に、私と納税者の目的である税務調査の終了と全面的な謝罪は難しいということになりました。
とりあえず、火曜日の調査はしないということと、こちらの要求をしっかりと書いた文書を置いて署を後にしました。その後、総括官から私に電話があり、税務署としては違法なことはしていないし、一般的な税務調査であり、もう1日どうしても調査日程をとって欲しいという内容でした。私としては、これを受け入れては名折れになってしまいます。断固拒否をしたところ、総括官は問題点は2ヵ所であることを言ってくれました。
①現金売上の漏れが少しあった為、もうこれ以上ないかどうか
②娘さんに出していたアルバイト料が専従者給与の届け出が出ていないので否認する、というものでした。私は、納税者からこの2点についてヒアリングを済ませていたので、即座に電話で答えておきました。
①は、これ以上はない(5,000円くらいの売上計上漏れです)
②は、娘さんが東京に住んでいて生計は別の為、アルバイト料は認められ、娘さんはこの分も申告している。これを証明する為なら、半日程度の時間を税務署で(納税者宅ではなく)打ち合せをするならOKと伝えました。
総括官もこれに納得し、1週間くらい後に2人で行きました。一通り書類を見せて説明したところ、今回は5,000円の売上計上漏れのみで終了するということになり、問題発言をした担当上席が総括官と一緒にきっちりと謝ってくれました。苦虫をつぶしたような顔でしたが。納税者も私も心がスッキリと晴れました。
今回の出張日当は12万円でした。
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